当分析はCAPAが2020年3月30日に発表した
COVID-19: SIA Group the big winner in Asia-Pac bailouts (UPDATED)
をJAMRが全文翻訳したものです。
2020年4月11日
COVID-19:SIAグループ、アジア太平洋のエアライン財政支援の大きな勝者(最新版)
自国の政府が、航空と観光を極めて重要な課題として居るシンガポール航空は、今やコロナウイルス危機から業界のリーダーとして立ち上がる、良い位置に居る様に見える。全アジア太平洋地域の他の国の政府はCOVID-19危機の間、エアライン業界を支援する対策を講じて居るが、殆どの場合、打たれた対策は、今のところ、臆病で不十分なものである。
幾つかの政府は、早い時期から、 公租公課の免除を基本にしたパッケージの導入に動いたし、政府の後押しする貸付金も提供されて居る。現在のところ、これらの努力を、航空会社への財政援助と言う、より直接的な形でフォローアップして居るのは一握りだが、さらに多くの政府が続きそうだ。
その様な施策は市場を歪める危険を孕んで居るし、概して、政府にとって、かくも世界的につながった業界の中で、勝者と敗者を選び出さねばならず、理想的なものとは言えない。
然し、業界の受けた衝撃の規模の大きさから、脚本は既に窓から投げ捨てられて居る。パンデミックが収束した後に、どのエアラインが最強の位置取りをして居るかを決定するのに、エアラインを支援する事に、最も意欲のある、そして能力のある政府である事が、最大の要因になるかも知れない。
それは、長期にわたる市場の絵姿に対する影響には関係無く、時としてなまくらな道具が手に入る最良の武器と言うこともある。
(*SDG1=75.87円)
概要Summary:
l 政府支援と財政テコ入れは、SIAに、より多くの息継ぎの猶予を与える
l 韓国とマレーシアはエアライン業界を支援する選択肢を考慮
l キャセイ太平洋は香港政府に空港使用料免除以上の支援を要請
l 豪州政府は、地域航空各社からの請願に配慮
シンガポールはエアラインと従業員を支援するために、480億SDGの国家の景気刺激策パッケージに踏み出す
シンガポール政府はエアラインを支援するリーダーの一人として注目され始めた。
2020年3月26日、同政府は航空とその他の分野を助ける大規模な対策を発表した。
これらの中には、4,600シンガポールドル(*SDG)を限度とする、航空産業従事者の月給の75%を資金援助し、そしてエアラインに対する3億5,000万SDGの料金免除が含まれて居る。これは、政府が発表した、480億SDGの経済活性化パッケージの一部である。
国の後ろ盾を持つテマセク・ホールディングズもまた、シンガポール航空を支える手を打って居る。SIAの大株主であるテマセクは、同エアラインの、ほぼ全面運航休止状態での生き残りを助ける、新たな資金を調達しようとする努力を後押しして居る。
SIAは株主たちに、新たな普通株で53億SDGを、そして10年間の強制転換社債の形で、97億SDGまで提供する予定だ。これらは株主たちに、持ち株比率で提供され、両方の発行については、共に貸借対照表上の普通株として扱われるとSIAは述べて居る。
同エアラインは、また「短期の流動性の必要性」を支えると同社の言う、40億SDGのつなぎ融資の貸付をシンガポーリアンDBS銀行と調整して居る。
(3/30現在*SDG1=75.87円;4,600SDG=349,002円、480億SDG=3兆6,417億円)
テマセクはSIAを後押しし、パンデミック後の拡大のために良い位置につかせる
これらの施策は、間も無く開催される臨時株主総会にて、株主たちによる評決に付される予定だ。テマセクは、株式と社債の発行に賛成すると言って居り、そして持株比率での購入権を行使すると同時に売れ残り株を買い取る事で、下支えもすると約束して居る。
とりわけ、テマセクはこれらの措置が、SIAを短期間の資金的流動性の課題を切り抜けさせるだけでなく、「パンデミックの先の成長の位置に着かせる」だろうと述べて居る。
テマセクはSIAに対する同社の支援について、より燃費効率の良い航空機の納入を意味する、SIAの保有機群の近代化戦略への支援を強調して居る。他のエアラインが発注の延期を検討して居る中で、これは航空機製造メーカーにとっては、またと無い、良いニュースだろう。このエアライングループ(SIA、シルクエア、そしてLCCスクートなど)の機齢は、今でも6.3年と業界で最も若いもののひとつである。
シンガポール航空グループ保有機群の平均使用年数 2020年3月30日現在
Source: CAPA Fleet Database; CentreforAviation.com
韓国はLCCに対するローンに続いて、更なるエアライン税の支援策を考慮
韓国では、政府は空港の着陸料、駐機料、施設使用料の先延ばしをして居る。国営の銀行は、また、航空旅客の激減で強烈な打撃を受けて居る、低コストエアライン救済のために、3,000億KRWの無担保融資の提供に合意して居る。
最も至近の措置は、未だ政府による最終決定待ちだが、大韓航空、アシアナなどの大手エアラインに対する、30~50%の航空機の固定資産税割引である。
韓国の国土交通省は業界を支援する方策を模索するため、エアラインと会って居る。エアラインの方は、政府支援を選択肢の可能性を議論するため、別に会合を開き、更なる支援を要請する事になりそうだ。
(3/30現在*KRW1=0.088円;3,000億KRW=264億円)
マレーシア政府はエアライン業界対策を討議;再び統合合併がテーブルに
マレーシアの政府は、パンデミックに影響を受けた、エアラインへの支援の選択肢を検討して居る。
マレーシア航空は、目下、政府と航空分野の緊急対策について協議して居ると認めた。政府は、エアラインの様な企業の負債を肩代わりする仕組みを立ち上げることや、更に、より急進的な代替策として、エアラインの統合合併案さえ再び上がって居ると、報じられて居る。
マレーシア航空は、政府と統合合併の議論に入って居ないと強調して居る。同エアラインは、如何なる解決策も、供給過剰や長期の継続可能性など、より幅広い課題に対応すべきであると語って居る。
統合合併は一つの選択肢である一方、同エアラインは、その様な課題については、管理規制や政策の変更によっても同様に効果があると述べて居る。
香港政府を後ろ盾に持つ香港空港公団は、航空業界に10億HKD*の財政支援パッケージをスタートさせた。
これの、およそ2/3は、2019/2020年の政府の航空管制支援料の免除からなり、その免除分は利用者に還元される。その他の形態でのエアラインと空港利用者に対する空港料金支援が、パッケージの残りの1/3を構成して居る。
エアライン業界が、2019年に香港を覆った抗議活動からも財政的に痛手を被って居たため、これは、2019年9月以来、第3段目の支援策である。
キャセイ太平洋は最近の支援策を歓迎して居るけれども、COVID-19と世界の旅行制限のため、同社の置かれた状況は「大きく悪化して居ることから」これではまだ不十分であると強調して居る。
「我々の見方は、今回の危機の規模に相応しい、より切望される即効性ある支援がもっと与えられることが必要なのである。」とキャセイは言って居る。
(*HKD1=13.93円)
豪州政府は徴収免除と料金の払い戻しを実施
豪州では、2020年3月17日に連邦政府が、エアラインが飛ばす飛行機が大々的に減少する中で、大きくその価値を下げて居るコストである、燃料消費税、国内線航空管制利用料、そして国内線航空保安料の徴収免除と払い戻しなどの、航空支援策のパッケージを明らかにした。2020年2月1日以来支払い済の料金、1億5,900万AUDの一括払い戻しなど、パッケージは総額7億1,500万AUDになる。
幾つかのエアラインは、豪州政府に対しもっと踏み込むよう要請して居る。
この国の最大の独立系域内航空であるリージョナル・エクスプレス・ホールディングズ(Rex)は、この支援パッケージでは、月額100万AUD相当の恩恵しか受けないだろう。これは同社が、「大規模に減少した」スケジュールを運航する事で見込む、毎月1,000万AUDの損失を補うには「全く不十分である。」と、Rexの副会長ジョン・シャープが言う。
(3/30現在*AUD1=66.64円;1億5,900万AUD=105億9,576万円、7億1,500万AUD=476億4,760万円)
2020年3月28日、豪州政府は、特にこの分野に対する基金を発表し、域内航空業界の声を聴いて居る。これには、核となる域内路線網が必須の航空便と貨物の為に、維持する事を確保するための1億9,800万AUDを含んで居る。最小限の運航能力を確保する固定費に充当するよう、もう1億AUDが域内エアラインに直接提供される。
この発表は、Rexやその他のエアラインにとって丁度よいタイミングで行われた。2020年3月22日、Rexは、連邦政府や国家の資金が来なかったら、2020年4月6日から、クイーンズランドを除き、定期便の運航を休止せねばならなかっただろうと言って居る。
豪州のその他の地域航空各社は、その存続が厳しい脅威に晒されて居ると警告して居る。その中の8社は、2020年3月26日に政府に書簡を送り、もし、より直接的な支援が、直ちに与えられなければ、彼らの財政的存続は、「何週間ではなく何日間の問題かも知れない。」と言って居る。
連邦の支援パッケージが発表された後、Rexは、この支援で、「以前継続可能だった、全ての域内運航会社は、もし6〜9ヶ月以内に危機が収束すれば、勇んで仕事に戻る事が出来るだろう。」と語って居る。同社は全面的事業の停止、90%の従業員の帰休の準備をして居たが、30〜40%の従業員を残し、全59地点の目的地の殆どに減便した形での運航をすることが可能になると言って居る。
カンタスは殆どのライバルより強い立場に居る
驚くに値しないが、エアラインの財政的強さに従って、政府支援の見方はまちまちである。
カンタスは特に健全な流動性を持ち、更に11機のボーイング787−9を担保に105万AUDを増資して改善して居る。この取引はカンタスグループの手元キャッシュ残高を29億5,000万AUD、プラスもう10億AUDの未実行融資枠に引き上げることになる。
この弾薬庫は、カンタスは、例え殆どの路線網が休止となっても、可なりの期間、生き延びる事を確かなものにしてくれるだろう。このバッファーにより、アラン・ジョイスCEOは、政府にとって更なるエアライン支援策よりも(バージンオーストラリアへの支援を指して居る)、無給休暇や一時帰休に追いやられて居る労働者に対する支援を高い優先順位に置くべきだと示唆して居る。
バージンオーストラリアは、2020年3月31日、同社の言う「広範な業界支援パッケージ」の一部として、正式に14億AUDの政府の支援を要求する事を検討して居ることを確認した。
ニュージーランド政府はニュージーランド航空に対し、同エアラインが、キャッシュリザーブが一定の閾値を下回っても、浮上し続けるよう、9億NZDの融資枠を提供して居る。
融資の額は同社が、需要の低迷する期間、運航し続けるに必要と判断する金額に基づくものだ。
「我々は、9億ドルを求め、同額を獲得した。」と、グレグ・フォランCEOは述べて居る。この融資枠は、24か月間有効の予定である。政府は同エアラインの資本調達または、債務の株式化により、返還を求める選択肢も持って居る。
(3/30現在*NZD1=64.92円;9億NZD=584億2,800万円)
業界の各グループは政府に圧力をかけるのを助ける
予期された通り、業界の各グループは、アジア太平洋の各国政府が追い詰められたエアライン各社の支援のために更なる対策を打つ様、圧力をかけて居る。
例えばIATAは、この地域の18か国の政府に書簡を送り、直接的財政支援、融資や融資保証そして課税減免の様な選択肢が必要だと強調して居る。
IATAは、豪州、ニュージーランド、シンガポールなど、益々増加しつつあるアジア太平洋の政府が、財政支援パッケージを導入して居る事に注目して居る。「然し我々は、より多くの政府が乗り込んで来る事が必要だと考えて居る。」IATAアジア太平洋地域副議長コンラッド・クリフォードは述べて居る。
アジア太平洋エアライン協会(AAPA)も、また、その様な政府の対策が早急に実施される事を声高に求めて居る。AAPAはエアライン各社がコスト削減の「厳しいが必要な対策」を採って居り、市場での資金調達を模索して居るが、これらの対策だけでは、「航空産業分野の生存を保証するのに充分ではないだろう。」と述べて居る。
AAPAが表明したような感情について言い争うのは難しい。航空はこの地域が第3世界の地位から発展しようとする社会経済的台頭のために、極めて重要な要素であり、これに従った観光の大波が、過去10年来のエアラインの成長と固く結びついて居た。
パンデミックは、この業界に余りにも激しい、そして急激な打撃を与えたため、最高の経営をして居て、財政的に最強のエアラインが突如として脆く見えて来た。もし、仮にエアラインが政府から支援の手を必要とする時があるとしたら、今が正にその時だ。
幾つかの政府の反応は、COVID-19がコースを走り終えた時に(願わくば)続く経済の回復に、エアラインが演ずる必要不可欠な役割を理解して居る事を示して居る。
その他の国々は、これまでより早く、そしてより踏み込んだ動きをする必要があるだろう。確かに、政府が国家の支援により、市場が歪められて居るか否かを検証せねばならない時があるだろうが、今現在は、その時までエアラインが依然として存在する事を確保するのが第一の優先事項である。
以上
COVID-19: SIA Group the big winner in Asia-Pac bailouts (UPDATED)