当分析はCAPAが2016年6月2日に発表した
LCC models in Southeast Asia evolve as growth slows, though outlook remains bright
をJAMRが全文翻訳したものです。
2-Jun-2016
東南アジアのLCC分野は過去10年間に亘り、爆発的な成長を遂げた後、新たな局面に入りつつある。近距離路線における供給拡大率は鈍化し、域内のLCC浸透率を小規模ながら下降させて居る。収益性もまた、懸念されたままで、2015年通年で殆どの市場では、すこぶる状況が良かったにも拘らず、域内の半数以上のLCCが赤字だった。
然し、成長は、より浸透率の低い、中距離分野で加速して居る。特に世界第2位だが、最も発展性のあるLCC連盟であり、地域を網羅するメンバーが集まり、共同販売の基盤を持ったバリューアライアンスを頂点として、LCCがこれまでの地点間モデル以外に新たな拡大の好機を求めて、提携を模索する活動が増えて居る。
提携関係は、エアアジアとライオングループに属さないLCCにとっては特に重要である。エアアジアとライオンは東南アジアのLCC市場の、それぞれ、30%を占め、約900機に上る、膨大な機材発注書を持って居る。
2016年東南アジアは緩やかな10%の保有機数拡大を予想
現在東南アジアには、LCCが21社あり、600機近い航空機を運航して居る。保有機数の総数は2013年始め以来、50%以上増えた。然し、拡大の速度は鈍化し、CAPAは2016年には比較的に穏やかな10%になるだろうと予測して居る。
東南アジアのLCC保有機数・エアライン別
Rank |
Airline |
Country |
LCC Group |
Fleet as of May-2016 |
Fleet as of Jan- 2016 |
Fleet as of Jan-2015 |
Fleet as of Jan-2014 |
Fleet as of 1-Jan-2013 |
1 |
Lion |
113 |
110 |
103 |
94 |
91 |
||
2 |
AirAsia |
81 |
80 |
80 |
72 |
64 |
||
3 |
Indonesia |
Lion |
49 |
48 |
31 |
27 |
27 |
|
4 |
49 |
47 |
48 |
48 |
41 |
|||
5 |
AirAsia |
47 |
45 |
40 |
35 |
27 |
||
6 |
Indonesia |
(Garuda) |
37 |
36 |
32 |
24 |
21 |
|
7 |
30 |
27 |
18 |
10 |
5 |
|||
8 |
Thailand |
Nok |
29 |
28 |
24 |
17 |
15 |
|
9 |
23 |
24 |
24 |
25 |
21 |
|||
10 |
Indonesia |
AirAsia |
23 |
24 |
29 |
30 |
22 |
|
11 |
Malaysia |
22 |
20 |
23 |
18 |
11 |
||
12 |
Thailand |
Lion |
21 |
18 |
8 |
2 |
0 |
|
13 |
18 |
18 |
18 |
19 |
18 |
|||
14 |
Philippines |
AirAsia# |
14 |
13 |
16 |
17 |
17 |
|
15 |
Vietnam |
Jetstar |
12 |
12 |
8 |
5 |
5 |
|
16 |
Singapore |
(Singapore Airlines) |
11 |
11 |
6 |
6 |
4 |
|
17 |
Philippines |
Cebu Pacific |
8 |
8 |
4 |
5 |
5 |
|
18 |
Thailand |
AirAsia X |
6 |
5 |
2 |
0 |
0 |
|
19 |
Thailand |
Nok |
3 |
3 |
0 |
0 |
0 |
|
20 |
Indonesia |
AirAsia X |
2 |
2 |
0 |
0 |
0 |
|
21 |
Thailand |
VietJet |
1 |
1 |
1 |
0 |
0 |
|
|
TOTAL |
|
|
599 |
580 |
515 |
454 |
394 |
Source: CAPA - Centre for Aviation
注)ゴールデンミャンマーとマリンドエアは既にLCCとは見做されないために除外。
*バリューエアは2013年1月と2014年1月ジェットスターアジアに含む。ヴァリューエアは2014年ジェットスターアジアに包含される前はジェットスターアジアの子会社だった。
^セブゴーは2015年までタイガーエアフィリピンズとして知られて居た。2014年にセブパシフィックに買収され、2015年にセブパシフィックのターボプロップ保有機を継承した。
#フィリピンズエアアジアとゼストエアアジアは全ての年で保有機数を合算。ゼストは2013年にエアアジアに買収されたが、2015年遅くまで別の別のAOCの元に運航して居た。
広胴機部門は今や、狭胴機よりずっと早い率で伸びて居るが、基礎となるものが比較的小さい。現在55機の広胴機があるが、東南アジアの7社のLCCにより運航されて居る。2014年の始めにはあ東南アジアの5社のLCCにより38機の広胴機が運航されて居た。
東南アジアのLCCの広胴機は2015年に37%増加したが、一方、狭胴機保有機数は10%未満の伸び率である。ターボプロップ保有機数は、やはり小さな基礎から、急速に:33%伸びて77機になって居る。
東南アジアの供給の伸びは、LCC浸透率が停滞して鈍化
OAGのデータによれば、東南アジア域内での供給は僅か9%近い伸びだった。FSCの席数は2015年に14%伸びて、15年前に東南アジアで最初のLCCが飛び立ってから初めて、LCCを凌いで居る。結果として、15年間着実に伸びて来た東南アジア域内のLCCの浸透率は初めて下落した。
東南アジアと他地域の間のLCCの供給席数は、依然としてFSCより伸び続けて居るが、ずっと小さい規模だ。東南アジアと他地域の間のLCCの供給席数は、2015年に東南アジアの長距離LCC分野に牽引されて14%伸びて居る。
2016年最初の5ヶ月間を通じて東南アジア域内のLCCの浸透率は更に下降する、一方で東南アジアと他の地域間では、伸び続けて居る。現在のところ、LCCは東南アジアの域内では供給席数の約56%を占めるが、東南アジアと他の地域の間の供給に対しては21%を占めて居る。
東南アジアのLCC浸透率(供給席数の比率%):2007年から2016年の5ヶ月 (表1)
Note: *for first five months of 2016
Source: CAPA - Centre for Aviation & OAG
それでも東南アジアのLCCには、まだ、東南アジア=北アジア間の市場全般で拡大するのと同様に、北アジアで市場占有率を伸ばす、巨大な機会がある。LCCは現在、東南アジアと北アジア間の供給席数の25%を占めて居る。東南アジアと北アジア間のLCC浸透率は、間違いなく既に35%になって居る東南アジアと豪州間のLCC浸透率に近づく、或はそれを超える可能性がある。
東南アジア域内での市場専有率は、より高く、既に60%に近づきつつある事から、更なる向上のチャンスは、明らかに限られて居る。近距離LCCは、東南アジアは既に欧州または北米よりかなり高い浸透率を占めて居る。
2015年、域内LCCの過半数が赤字であり、収益性は未だ懸念される
東南アジアの近距離LCCの幾つかは、過去数年間、機材の発注を延期したり、売却したり、サブリースに出したりして、拡大のペースを落として居る。過去数年間、実収単価と収益性を圧迫して来た、膨大な供給拡大の大波を受けて、拡大の鈍化は避けられない事だった。
供給過剰は、幾つかの東南アジアの主要市場で経済的不調や政情不安から、市場環境が比較的悪化した、2014年に特に大きな問題となった。東南アジアのLCCで2014年に黒字を計上したのは4社だけで、7社は損失を計上した(域内の他のLCCの財務情報は公表されて居ない)。
収益性は、燃油価格の低下と、幾つかの市場での状況好転のお陰で、2015年に大きく改善した。然し、供給過剰と不合理な競争が幾つかの市場では、相変わらず問題になっており、収益性を圧迫して居る。
2015年、世界中で殆どのエアラインが利益を出す事が出来たこの年に、東南アジアのLCCの半数以上が、まだ赤字であった。2015年の損益の数字はLCC21社のうち13社で入手できるが、その中で利益を出したのはたった6社だった。
東南アジアのエアライン分野の営業利益/損失(単位百万ドル):2015年対2014年
Rank |
Airline |
Country |
2015 operating result |
2014 operating result |
1. |
Malaysia AirAsia |
Malaysia |
+405 |
+261 |
2. |
Cebu Pacific/Cebgo |
Philippines |
+213 |
+97 |
3. |
Thailand |
+82 |
+9 |
|
4. |
Singapore |
+20 |
-52 |
|
5. |
Indonesia |
+11 |
-14 |
|
6. |
Tigerair* |
Singapore |
+10 |
-16 |
7. |
Malaysia AirAsia X |
Malaysia |
-6 |
-54 |
8. |
Thailand |
-10 |
-43 |
|
9. |
Thailand |
-13 |
-13 |
|
10. |
Thailand |
-36 |
N/A |
|
11. |
Philippines AirAsia |
Philippines |
-46 |
-117 |
12. |
Indonesia |
-53 |
N/A |
|
13. |
Indonesia AirAsia |
Indonesia |
-66 |
-48 |
注)*タイガーエアとスクートの数字はそれぞれ2016年3月期と2015年3月期。その他の数字は2015、2014年暦年。
^ノックスクートとインドネシアエアアジアXの2014年の数字は、両社の開業がともに2015年始めであるため含まず。
数字は、セブパシフィックとセブゴーの連結した数字しか報告の無いセブパシフィックを除き、全てエアライン単体のもの。
米ドルへの為替換算は、2014年と2015年の平均換算値に基づく。
Source: CAPA – Centre for Aviation
東南アジアのLCC分野は、引き続き大変激しい競争下にある。この地域のLCCの幾つかは既に大きなグループのメンバーであり、特筆すべき規模の統合は起こりそうに無い。
エアアジアとライオンはそれぞれ、現在でも東南アジアのLCC供給席総数の1/3近くを占めて居る。彼らはこの地域のLCCの保有機数の60%を保有し、発注リストの80%以上を占めて居る。
現在エアアジア/エアアジアXグループの下に国境を越えた共同事業5社を含め、全部で7社ある。ライオングループには、国境を越えた共同事業2社を含め、LCCが3社とFSCが2社ある。その他の東南アジアのLCC10社の内、5社はFSCグループの子会社である。
東南アジアのLCCグループの保有機数と発注リスト:2016年5月現在
Airline Group エアライングループ |
Number of airlines 機数 |
Current fleet size 現保有機数 |
Orders発注機数 |
AirAsia/AirAsia X |
7 |
195 |
382 |
Lion Group |
3 |
183 |
495 |
Cebu Pacific |
2 |
57 |
48 |
Garuda (Citilink) |
1 |
37 |
43 |
SIA (Scoot/Tigerair) |
2 |
34 |
48 |
Nok |
2 |
32 |
12 |
VietJet |
2 |
31 |
85 |
Jetstar |
2 |
30 |
0 |
TOTAL |
21 |
599 |
1,065 |
注)東南アジアに本拠地を持つ、LCC子会社のみを含む。例えば、バティクとマリンドはFSCであるため、ライオングループから除いてある。
発注機数は親会社の本拠地の場所に基づく。例えばジェットスターの発注機数は豪州を本拠とする親会社からなされるため、これには含まれず。
全てのエアアジアとライオンの発注機数は、エアアジアが他地域に子会社を持ち、ライオンはFSC子会社を持って居るけれども、親会社が東南アジアを本拠地とするLCCであるため、含めてある。
提携とより多い乗継旅客が成長には必須である
LCCモデルは半年の間にバリューアライアンスとU-フライと言う2つのアライアンスが結成され、進化を続けて居る。U-フライはHNAグループの個々のLCC持ち株会社の集合であるが、一方バリューアライアンスの消費者に向けた提案は一枚の航空券で乗り継げる事であり、近近に戦略的な、或は例えば調達などでより緊密な協力をする計画は無い。
2016年5月に結成されたバリューアライアンスは発足メンバーとして9社のLCCからなり、このうち東南アジアからはセブパシフィック、セブゴー、ノック、ノックスクート、スクートとタイガーエアの6社で、160地点以上の目的地をカバーして居る。残る東南アジアの他の独立LCCの幾つかは今後、参加の可能性がある。
発足当初の段階で、バリューアライアンスは東南アジアのLCCの総供給席数の20%を占めた。エアアジアとライオンは依然としてより規模が大きいが、もし、シティリンクとべトジェットが加入するとしたら、この格差はもっと縮むだろう。東南アジアのLCC供給の6%を占める、ジェットスターグループはよりフルサービスエアラインとの提携に絞って居るため、また域内の子会社との繋がりを強めているため加入の可能性は少ないだろう。
グループ/アライアンス別、東南アジアの供給占有率(席数%):2016年5月 (表2)
注)othersには東南アジア以外を本拠とする幾つかのLCCを含む。
Source: CAPA – Centre for Aviation & OAG
バリューアライアンスのメンバーは、この新しいタイアップが、新たなインターラインの旅客需要を創り出して、自分の地元市場の外で、自社のプロフィールを(そして売上を)押し上げて呉れる事に期待して居る。それぞれの市場でエアアジアグループは、乗継旅客が全体の49%にまで伸び、そのうち33%が彼らの付加価値商品「フライスルー」を使い、残りの16%が自己手配の乗継であると言って居る。バリューアライアンスのメンバーは間違いなく、自分達のビジネスも同じ位に伸びてくれる事を期待して居る。
スクートのCEOで、外向的なキャンベル・ウイルソンによれば、メンバーはジェット燃料などの購入に協力しようとは考えて居ない。ウイルソン氏は加えて、「そういう事は将来、管理当局の認可次第で検討する可能性もあるが、現在は、よりセールス、流通、そして路線網改善のためのアライアンスなのだ。」と言って居る。と言う事は、現在のバリューアライアンスはインターライニングに毛の生えた程度のものしか提供しない様だ。
バリューアライアンスの保有機規模、2016年5月18日現在 (表3)
Source: CAPA Fleet Database
このグループ全体では、162機になるが、そのうち独自に最大の機数はセブパシフィックの49機、次いでノックの29機、ジェジュエアの24機、そしてタイガーエアの23機である。このアライアンスは187機を保有するエアアジアグループに比べるとまだ少ない。エアアジアのCEOトニー・フェルナンデスは2016年5月30日、ブルームバーグのインタビューに答えて、このアライアンスは「どちらかと言えば、余り上手く言って居ないエアラインが絶望から作ったものだろう。」と語って居る。フェルナンド氏は言う:「人々が低コストの信念を目の当たりにするのは良い事で、低コストターミナルももっと出来るだろう。」 然し、加えて:「アライアンスはコストと煩雑さを増大させる。我々はエアアジアXと小さなアライアンスを作って居るが、課金することで自己精算的になって居る。」
国境を越えた共同事業は、選ばれた成長モデルとして今後も君臨する
子会社/国境を越えた/共同事業の方程式の最も大事な所は、複数の行政地域で事業運営をする上で、外国人の所有制限を崩せる事である。この地域でその概念を取り入れた先駆者は独立した所有形態のエアアジアで、今度はフルサービスエアラインがその別ブランドを似たような方法で構築する事に途を開いて居る。これらの動き(いつでもそうなのだが、事態の革新とともに)が起こったタイミングは、極めて重要だ。5年前に、国境を越えた共同事業が認可されることなどあり得ないと思われた。
エアアジアグループは、同様の予測が何年もなされて来たにも関わらず、ASEANで外国人の所有制限が間もなく解除される事に自信を持って居る。フェルナンデス氏は、タイ、インドネシア、マレーシアそしてシンガポール各国政府の官僚と「良い会議」が出来たので、彼の目標である単独企業体への途に進展があった事について、間もなく「ある発表がある」と期待して居り、「ある光明が見えて来て、素晴らしい時がやって来る」と言う。
エアアジアは現在5社のエアラインを持って居る、一つは地元マレーシアにあり、他はインドネシア、タイ、インド、そしてフィリピンにある。これとは別にマレーシアにエアアジアX、タイエアアジアX、そしてインドネシアエアアジアXの国際線エアラインがある。エアアジアジャパンは2016年中に開業の予定だ。
エアアジアはこの間ずっと、野心的で、常に成功した訳では無いが、活動する国境を越えた事業モデルの最高の見本を提示して来た。ジェットスターグループは、4つの稼働中のエアライン、一つは同州(そして同じ市場を共有するニュージーランド)、シンガポール、ベトナム、そして日本で、そのモデルを同様に採用して来た。香港への挑戦は、延々と続いた、難解で極めて主観的な「主たる事業の所在地」を順守する事の語義解釈の戦いの結果、最終的には2015年に立ち消えになってしまった。
観光と商業は自由なアクセスから恩恵を受けるのだから、政府の方針は着実に緩和され、進歩的で、より正式なASEANの多国間協定の規制緩和にとって、より受容的な環境が築かれて来た。欧州連合(EU)の域内に創造された市場と比較すると、ASEANの「オープンスカイ」協定は依然として不十分である。然し、これはアジアで急増する国境を越えた共同事業がその代わりと言えるだろう。2国間で創業する権利を、公式に禁止されるのを回避する一つの策として、これら共同事業は殆ど自動的に、アジアの当事国政府には受け入れられる様になって来た。
技術的には、共同事業エアラインは2国間協定のためには地元の航空会社である。即ち50%超を地元資本が所有し、例え、地元資本は通常、物言わぬ提携相手で、殆どの2国間協定の「実質的管理」の必要事項は稀にしか守られないものの、実質的所有者は当該国の国民と見なせる。この状況は、ジェットスターシンガポールで起こった様に、時に物言わぬ提携相手が目覚める事もあるので、完全に満足出来るとは言えないが、共同事業という手法は進化であり、着実に、大時代的な2国間協定の縛りを足元から崩して行くと言う事が重要なのである。これは制限されたシステムの中だけで機能し、共同事業のシミュレーションに過ぎないグローバルアライアンス(世界航空連盟)とは対照的である。
かつて、法律の条文通りの所有や管理規制の遵守についての要塞だった日本でさえ、すっかりこの形の市場形成について緩やかになって居るのだ。ANAはエアアジアとともにLCC共同事業を立ち上げ、2012年8月に開業したが、同時にかなり大きな少数株主である香港資本とLCC子会社ピーチを創業した。JALはワンワールドの盟友であるジェットスターとLCC共同事業を計画した。そして日本の管理当局は、今や、韓国、中国と、もっと自由化されたアクセスを、主に2国間協定の段階で促進して居る。
国境を越えた共同事業は、明らかに、規制に対する完全な解決策では無いが、それが規制緩和の進化への踏み台になるとすれば(なりそうに見える)、極めて有効な目的に貢献する事になるだろう。
所有形態の変化;然し二重ブランド戦略がより好まれる様になって来た
二重ブランドへの冒険は、それぞれのエアラインの幹部がそれぞれの戦略を押し付け、しばしば相手を親戚ではなく、競争相手として扱う事になる事から、ブランドの重複を管理する事が、戦略的に難しい事だと判って来た。状況は、むごたらしく非生産的になりかねない。何がグループにとって最善なのかに集中する事を教え込むためには、強力なグループの指導者が必要であるが、特に二つのブランドの双方が同様にグループによる100%所有の場合は難しい。
部分所有は更に複雑な議論を要する、これは勿論、談合が許される場合に限られるが。典型的なメカニズムは運営会議、即ちカンタス航空/ジェットスター航空の例ではどちらのブランドが何をするか調整する「フライイング委員会」である。この「フライイング委員会」は共同事業へと発展した。ジェットスター・ジャパンでは部分所有者のJALがやはり調整をして居る。
シンガポール航空グループは、これをもっと強力にした。同グループは今や同じグループ傘下に4つのエアラインを持つことから、そのエアラインは二重ブランドどころでは無い所に進化して居る。同グループは主力のシンガポール航空、そしてシルクエア、これに並行してLCC市場にタイガーエアとスクートを持って居るのだ。SIAは2016年早くに完了した完全継承に入札を開始する前には、もともとタイガーエアの少数持ち分を保有して居た。
シンガポール航空グループのブランド相関図 (表4)
Source: Singapore Airlines Group
複数ブランドと言う現状は、結局はSIAをタイガーエアをコントロールする事に制限ある状況、(今や解消した)に陥れたのだが、周囲の環境の、そして当初の戦略的に臆病だったことのなせる技だった。
2016年5月18日、SIAグループはスクートとタイガーエアの新たな持ち株会社を「バジェットアビエーションホールディングズ」傘下に設立する事を発表した。これはその他の子会社、特にタイガーエアオーストラリアとタイガーエア台湾のリブランディングが完了した後には、合併への途を開いて置き、2つのエアラインの更なる統合を円滑に進めるためだった。
この新しい構造は基本的にはスクートとタイガーエアが共通の営業的目標を持ち、無用な機能の重複を除去する事を確かにするためだった。2016年5月、タイガーエアは統合への重要な道程となるスクートの予約システムへの移行を完了した。この2社は2012年10月以来インターラインの協定を結んでいるのに、現在は、スクートの旅客の約5%しかタイガーエアに乗り継いで居ない。
スクートの路線網モデルと急速な拡大の意思からすると、現在の乗継旅客数は不十分である。
スクートは、2017年3月までの今年度(FY2017)内に供給(ASK)を51%拡大する計画を立てて居るが、これによって、大量のタイガーエアからの送客が必要とするだろう、遙かに大きな事業となる。
CAPAが既に2016年4月26日に強調した様に、インドの副次的目的地である、アムリトサル及びジャイプールへの新路線は、シンガポールからは小さな市場に過ぎず、特に大量の乗継旅客需要を必要とする。スクートはまた2016年3月2日にSIAから引き継いだ新路線のシンガポール=ジェッダ線についても乗継旅客需要に強く依存せざるを得ない。
SIAは今や、漸く、2つのLCCと、グループ全体の見通しの改善になるはずである、タイガーエアとスクートの完全統合を追求する事が可能になった。然し、これはSIAの低コストエアライン戦略の進化の最終章では無い。中期的にはLCCブランドの統一移行と完全合併があり得べき結論だろう。
一方で、新たに統合されたタイガーエア/スクートの経営チームは急速な供給の拡大を管理し、独自のLCC文化が、SIAから充分な距離を置いて守られる事を実現する必要があるだろう。
これはこの地域のモデルであるジェットスターの成功への基本理念だった。即ち、ジェットスター創設の時点で、カンタスの中に激論を巻き起こしたが、関係は大いに相補なう形で進化して行ったのだ。SIAにとっては、この距離は決して容易なものではないだろうし、どんな過ちもスクートの大いに成功を収めた最初の4年間に成し遂げたものを簡単に消し去りかねないのだ。
二重ブランド戦略に失敗したFSC各社の長い列の後ろに、フルサービスの親会社がその主力の事業を取り囲む壁をいくらか取り除いて、実現可能なモデルを見出した様に見える。それはどこか中間点に最適なポイントがあるのに、親会社のブランドを傷つけてしまうと言う、長く続く、相互感染の恐怖だったのだ。
東南アジアのLCC分野の展望は最近の問題に関わらず、比較的明るい
エアアジア、とライオンは当面、グループ内に的を絞って居るが、エアアジア、ジェットスター、そしてライオンはともに乗継旅客需要を伸ばそうと考えて居る。東南アジアのLCCの全てが、地点間需要への依存を減らし、より多くの乗継需要を惹きつける必要がある彼らのビジネスモデルの進化は拡大の新時代の扉を開き、収益性を改善してくれるかも知れない。
然しながら、東南アジアのLCC市場の殆どは、地点間需要のままであり、エアラインは過度のコストと複雑化を進めないよう注意せねばならない。現存する種々の問題にも関わらず、未だに東南アジアの域内には巨大な成長の機会が存在する。
東南アジアの経済は引き続き急速に伸びようとして居るし、この地域の中間層の人口はうなぎ上りである。LCCはその低運賃が需要を刺激する事が出来る事から、拡大する中間層から恩恵を被るのに、全体として丁度良い所に居る。
以上
LCC models in Southeast Asia evolve as growth slows, though outlook remains bright