当分析はCAPAが2016年5月17日に発表した
Taiwan's LCCs – Tigerair Taiwan and V Air – focus expansion on Japan; other markets incubating
をJAMRが全文翻訳したものです。
17-May-2016
丁度一年間で、台湾のLCC各社、タイガーエア台湾とVエアは台湾=日本間市場の10%を勝ち取って居る。どの市場より多くの台湾人が日本を訪れる一方で、台湾は日本からの訪問市場としては韓国、中国本土についで第3位である。台湾人は日本に対する親近感を持って居るし、文化も共有する部分もある、加えて2011年11月のオープンスカイ協定合意が、拡大へと解き放ったのだ。2016年夏の供給席数は5年前の2011年夏に比べて143%も増加して居る。また2016年夏は、2015年夏より26%も上がって居る。
6年前にはLCCは市場に存在しなかった。今や、LCC各社は全市場の26%を構成し、特定路線では高い占有率を示して居る:大阪=台北では30%、東京=高雄では43%である。台湾のLCCはLCC市場の35%を占め、2016年始めの時点の倍の占有率になって居る。
台湾のコストの低さと地元市場である強みが、台湾LCCに日本路線での強い拡大の見通しを齎して居る。然しながら、他所では、彼らは新市場を見出すのに、苦戦して居る。日本路線の供給席数は、タイガーエア台湾とVエアの57%を占めて居る。韓国と香港が2国間で制限があり、東南アジアは未だそれほど人気の市場ではない。台湾のLCCは、供給が充分でない日本市場では、素早く勝利を収めたが、今や、彼らの行く手には、新市場への関心を醸成する大仕事が待って居る。
低コストエアラインとフルサービスエアライン、日本の8空港で重なる
2016年の下期に、エアライン各社は台湾から日本の21都市に定期便を飛ばす計画である。これらの都市のうち、12はフルサービスのみ、8つはLCCとフルサービスの双方が飛んで居る。少し離れた東京の代替空港である、茨城への供給はLCCだけである。
台湾から便のある日本の目的地地図:フルサービスのみ(緑)、フルサービスとLCC(赤)そしてLCCのみ(黒)、2016年下期 (表1)
Source: CAPA - Centre for Aviation, OAG and Great Circle Mapper
札幌のこれまで唯一のLCC就航は、2016年9月から第5の自由運送権を使ったスクートの便になる予定だ。
台湾のLCCは日本のフルサービスエアラインより大きな市場占有率を保持して居る
台湾=日本間の市場占有率は特異な特徴を持って居る。台湾の2代フルサービスエアラインである中華航空とエバーが、49%の市場占有率を持って居るのだが、日本の2大エアラインである、JALとANAがたったの9%なのである。タイガーエア台湾は、まだ2年しか経って居ないが、既に歴史の長いANA(3%)よりも大きな市場占有率(6%)を持って居る。
第5の自由フルサービス運航会社である、キャセイパシフィックは、地元のLCC(バニラエアとピーチがそれぞれ5%、Vエアが4%)より大きな占有率を持って居る。キャセイはまた、地元のフルサービスエアラインであるANAより占有率が高い。Vエアは、親会社であるフルサービスエアラインのトランスアジア(8%)の半分(4%)の占有率である。
台湾=日本のエアライン別供給席数占有率:2016年7月11日~7月17日 (表2)
Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG
2016年7月、台湾=日本間路線の供給席数の、ほぼ26%がLCCによる運航となる
2016年7月、台湾=日本間路線の供給席数の、ほぼ26%がLCCによる運航となる予定だ。
これは、市場で最初のLCC便が飛んだのが2010年だった事を考えると、決して小さな達成では無い。シンガポールを本拠地とする、ジェットスター・アジアが2010年7月にシンガポール=台北=大阪/関西の便で、台湾と日本の間を最初に飛んだLCCである。スクートは2012年9月にシンガポール=台北=東京/成田路線を飛び、日本のLCCとしては、ピーチが2012年10月に台北=大阪/関西線でこの市場に参入した。台湾のLCC各社は2014年に開業して間もなく、2015年に日本に就航して居る。
台湾のフルサービスエアラインが日本のフルサービスエアラインの5倍の占有率なのに、日本のLCCの方が台湾のLCCより大きい。日本のLCCは市場の13%を占めるが台湾のLCCは10%である。LCCによる全供給の、残りの3%は外国エアライン(シンガポールのジェットスター・アジアとスクート)である。
Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG
台湾のLCC各社は日本のLCCより有利な立場にある
日本のLCCは台湾の競合社より大きいかもしれないが、台湾のLCCはより短期間に、より早い成長を遂げて居る。後の章で議論するけれども、日本のLCCには他にも強力な市場があるが、台湾LCCにとっては、日本が唯一の大きな商機なのである。
2016年2月以来、台湾のLCCは台湾=日本間市場で、ほぼ35%の占有率を持って居る。これは、2016年初頭に起こった大規模な拡大を象徴し、2016年の始めの18%からの急速な成長である。日本のLCCの市場占有率は、2016年始めの63%から北半球の冬ダイヤの開始に予測される48%へと減少する。第5の自由LCCは19%から16%に減って居ると予想される。
Source: CAPA - Centre for Aviation and CAA
台湾のLCCは、日本のLCCに比べ、理論上、幾つかの点で戦略的優位性を持って居る。
地元市場: 2015年、台湾を訪れる日本人(160万人)の2倍の台湾人(370万人)が日本を訪れて居り、台湾のエアラインの存在感を高めて居る。
コスト:台湾は、日本に比べ、可なり低いコスト基準を提供して居る。
都市組み合わせと本拠地:台湾の5空港から日本の21空港に便がある。供給は、これらの数字が示唆する以上に、もっと台湾に集中して居る。81%の供給は台北/桃園からで、残る9%が台北/松山からだ。日本では、供給の45%が東京地区に、34%が大阪に向かって居る。
台湾のエアラインは、一つの台湾の都市(台北)から容易に飛ぶことが出来、地元市場の殆どを獲得出来る。然し、日本のエアラインは、似た様な規模の水源を確保する為には東京と、大阪双方に飛ばなくてはならない。
これに加えて、台北に一つ基地を持てば、台湾のLCCは、日本の小さな都市に便を張れるが、日本のエアラインが、日本の小さな都市から飛ぶには航空機をそこに配備せねばならず、さもなくば、複雑なルートを飛ばさねばならない。ピーチは、東京/羽田の限られた夜間発着枠を利用する為に、特定機材が複数の区間を飛ぶスケジュールを立てようとして居る。然し、東京/羽田は、大きな意味のある市場であり、日本のLCCは、小規模で、実収単価の低い日本の都市には、運用面での複雑さを持ち込みたいとは思わないだろう。
これらの優位性は、自然に、市場の占有率に反映される訳では無い。日本のLCCはより数が多い。(4社が就航して居り、5社目のエアアジアジャパンが開業しつつある)。彼らはまた、明白な戦略的目的を持つ傾向にあり、殆どが関係するフルサービスエアラインとは、距離を取って居る。
台湾のLCCについては、過半の株主である中華航空が、長期的には、タイガーエア台湾をどの様に使い度いのか、そして、強い成長への約束があるのかをこれから見る必要がある。タイガーエア台湾は、また、もしタイガーエアがスクートと統合されるのであれば、シンガポールを本拠とするタイガーエアブランド、そして機能(ウエブサイト、予約など)から、独立性を守る必要があるだろう。(この事は、タイガーエア・オーストラリアにも言える)
Vエアは、日本ではフルサービス親会社の復興航空(トランスアジア)の半分の規模である。復興は、大陸間横断のエアラインになる高遠なビジョンを持って居るが(同社はA330を運航して居るが、域内だけである)、戦略的方向は定かでなく、また、2度の大きな墜落事故で、評判を落として居る。復興は大陸間横断路線網を展開するのか、低コストの基盤に変更するのかどちらかが必要だろう。アジアで、大陸間路線の繋がりの無い、フルサービス域内航空と言うのは、実質的に唯一である(長期的な成功を収めており、戦略的意味合いでも復興とは異なるが、バンコク航空もこの範疇に入る)。
LCCは台湾=日本間市場の26%を占める
LCCの浸透率26%と言うのは台湾=日本間市場全体のものだ。路線ごとの実績ではもっと強い。2016年7月に、日本と台湾の間では、10路線が供給席数の91%を占める。LCCはこのうち8路線に就航して居る。
例外の2路線とは、東京/羽田と台北/松山(台湾のLCCは松山に就航して居ないが、羽田には飛んで居る)、そして台北/桃園から札幌である。台北/桃園=札幌線は2016年9月にLCCの便が参入するが、これは、第5の自由運送権を持つシンガポールのLCC、スクートによるものだ。
これは、多分、台湾のLCCが、札幌を見逃して居たことを意味するのだろう。(札幌には、日本の国際線LCC便が無い。)台北=札幌は、タイガーエア台湾、Vエアの両社とも使って居るA320の航続距離ギリギリの所である。冬場の特に風の強い日には、便は運航上の制限に直面する可能性がある。
LCCの飛ぶ8路線(トップ10路線のうち)の浸透率は、概ね30%を超えて居る。1路線(福岡=台北/桃園)だけが、平均LCC浸透率を下回って居る(22%)。日本=台湾の総計LCC浸透率は、LCCが飛んで居ない地点が、飛んで居る地点程、繁盛して居ない事、そしてまだ歴史が浅い事から、影響を受けて居る。LCCが飛ぶ所では、彼らは市場を拡大し、市場占有率を勝ち取って居る。
日本=台湾間10大路線のエアラインタイプ別供給席数、及び東京=台北市場の供給合計(左軸)とLCC浸透率(右軸):2016年7月11日~17日 (表5)
Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG
台北/桃園=大阪/関西及び東京/成田への2大路線に於いて、LCCは供給席数のほぼ30%を構成して居る。全ての空港の組合せを含んだ、東京=台北市場の総計では、LCCは総供給席数の25%を占めて居る。LCCは幹線では健闘して居り、そしてまだ飛び始めて日が浅いのだ。
より小さな路線を見ると、彼らの供給席数占有率はより高くなり、まだ成長して居る:7位、8位そして9位の規模の市場で、LCC浸透率はそれぞれ38%、43%、そして50%である。これらの数字は当然LCCの飛んで居ない市場のために小さくなってしまうが、潜在力のある事を示して居る。
これまで、LCCが開設した新たな目的地は一つだけ、茨城空港である。台湾が既に21の日本の都市と繋がって居ることから追加できる目的地は当然限られる。然し日本の空港が、もっと多くの便を惹きつけようとして居るのだから機会も間違いなくある。航続可能距離の向上した次世代の狭胴機なら、北海道のずっと奥の地点まで開設出来る可能性はある。
最終的には、二重ブランド戦略が定形化し、既に開始されて居る事から、需要の大きくない路線はフルサービス部門から、低コスト部門に移行する事が可能だろう。これら、小規模需要の路線は、市場を育てて呉れるエアラインに、より大きな金銭的インセンティブを提供することも多い。
台湾のLCCには、日本に商機があるが、その他の市場はもっと難しい
日本は、タイガーエア台湾と、Vエアの両社で、全供給席数の約57%を構成する。これは、単一市場としては、可なりの露出である。
タイガーエア台湾の市場別供給席数:2016年7月11日〜17日 (表6)
Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG
Vエアの市場別供給席数:2016年7月11日〜17日 (表7)
Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG
北東アジアは、タイガーエア台湾の供給席数の84%を占め、Vエアでは64%である。両社とも、日本が北東アジア路線での現供給の過半を占める。違いはと言うと、大きくはタイガーエア台湾は、マカオに飛んで居る事だ。タイガーエア台湾の親会社である中華航空は、マカオに飛んで居ないが、一方、Vエアの親会社である復興航空は、マカオ線に就航して居る。(Vエアも短期間マカオに 便を持った事がある。)
台湾、韓国の二国間協定は、ソウル線に関し極めて制限的である
商機は、見た目ほど潤沢にあるとは言えない。北東アジアでは、台湾、韓国の二国間協定は、ソウル線に関し極めて制限的である。最近行われた拡大改訂も断片的なものである。済州空港は、発着枠に制限があり、便就航に残されたのは主として釜山だけである。香港との二国間協定もまた制限的だ。中華航空は二国間協定が許せば、タイガーエア台湾を台北=香港の幹線路線に使う可能性を語って居る。中国本土の空港は、大きく括ると、良い市場になる可能性があるものの、発着枠に可なりの制限があるか、余りに実収単価の低い目的地であると言える。
東南アジアは、台湾のLCCにとっては難しい市場である。東南アジアは、台湾から狭胴機の航続距離の範囲であるが、東南アジアのLCCが既に台湾に自ら拠点を立ち上げて居る。
実際問題、台湾で自国の航空業界にLCCを導入する様に促したのは、東南アジアのLCCの存在だった。フルサービスエアライン(キャセイパシフィックの様な)が、長い間、台湾を発地需要の市場として使って来たのに対し、幾つかのLCCは、域内のより小規模な目的地へと乗継便を提供して居る。
更に、東南アジアは、これまで人気の目的地ではなかった。台北から、バンコクは僅かに東京より遠いけれど、可なり安い。2015年に、台湾の3大アウトバウンド市場(日本、中国本土、そして香港)は、台湾人出国者の70%を占めた。タイは、出国者数の5%を占め、唯一目に付く東南アジアの市場である。米国には、近隣のベトナムより16%も多くの出国者が向かって居る。米国に向かう出国者数は、シンガポールとマレーシアを合わせた数にほぼ等しい。
市場別台湾人出国者数:2015年 (表8)
Source: CAPA - Centre for Aviation and CAA
日本の商機は豊かである、空港にそしてエアラインにとって
日本は、引き続き可なりの商機を持って居る。日本の小規模な空港がインセンティブプログラムを広げる事から、更なる成長の可能性がある。然し、その他の市場は、容易に勝ちを得られる所はどこにも無い。韓国、香港と言った可なりの商機の見込める市場は二国間協定で制限されて居り、当面、打開の糸口は見えない。中国本土やその他の幾つかの市場には、明確な二重ブランド戦略が必要かも知れない。
東南アジアの幾つかの目的地は、これからLCCが認知度の向上を図らねばならないだろう。欧州のLCCは、嘗ては忘れられて居た大陸の、ある地方全体に、観光経済圏を創り出し、これを上手にやって居る。然し、北東アジアのエアラインは、ずっと抑えつけられて来た需要があるので、概してその上に胡坐をかいて来た。「東京」と言う名前が既に客をよび、何の説明も要らないのだ。
近隣のLCCである香港エクスプレスは、これまで供給の足りない市場で、素早く勝利をものにして来た(同時に二国間協定の制限の無い、日本と韓国にも大きく依存して居る)。然し、ベトナム、ミャンマーそして太平洋(グアム、サイパン)などの新地点については、認知度の向上を必要として居る。
北東アジアのLCCの経験は、東南アジアやその他の大陸のLCCと大きく異なって居る。教訓から学ぶ事は可能だが、この地域は他の地域のLCCのコピペを導入する事は到底出来ない。ここでは、二国間協定、発着枠、そして二重ブランド戦略がLCCの経験を形作って居る事が、他市場より遙かに多い。
これらの問題があって、地震の様な大きな変化を望むのは難しいが、それらが長く前途に光り輝く商機を損なう訳では無い。
以上