当分析はCAPAが2016年11月24日に発表した
Ryanair: digital success raises ancillary target to 30% as it becomes the "Amazon of air travel"
をJAMRが全文翻訳したものです。
2016年12月11日
ライアンエア:ディジタル分野の成功で、付帯サービス収入目標を30%に引き上げ
=航空旅行のアマゾンになる
24-Nov-2016
ライアンのCMO(最高マーケティング責任者)であるケニー・ジェイコブスは、かつて同社のウェブサイトが、航空旅行のアマゾンになることを目指して居ると語って居る。同社は他でも無い、航空座席を、出来る限り安く売ることを基本理念に創られたが、今や、より幅広い範囲の商品とサービスを売ろうとして居る。2016年10月には、宿泊サービスのライアンエア・ルームズを開業、来年夏までにライアンエア・ホリデーズをスタートさせる計画だ。
開始3年目に入ったライアンエアの「常により良く」プログラム(Always Getting Better、略してAGB)は、確かな成功を収めて居る。主要空港に於ける存在感増強の動きも伴い、AGBは顧客サービスを改善し、ディジタル・インターフェイスの分野も再活性化させようとして来た。2014年にAGBが開始されて以来、ライアンエアの旅客数は2桁の成長率に戻り、搭乗率も10ポイント以上も上がって居る。
AGBの一部として、ライアンエア研究所チームが先導したディジタル分野の戦略が、ryanair.comを世界第1位のエアラインサイトに引き上げた。更に、ライアンエアのモバイルアプリは2014年に立ち上げたばかりなのに、英国で最も利用されるエアラインアプリになった。ライアンエアのディジタル展開は、より野心的な付帯サービス収入目標への基礎を築いてくれた。同社は、付帯サービスで得ようとする収入の比率を20%から30%に引き上げて居る。
ライアンエアの搭乗率と旅客数はAGBの導入以来、上昇して居る
AGBの成功の評価は、旅客数を伸ばせるかどうかに掛かって居る。ライアンエアはすでに欧州域内路線の中で、単独では最大のエアラインだったが、2014年のAGB導入以来、その旅客数の伸びは加速して居る。
強力な2桁の伸びが何年も続いた後に、同社の旅客数伸び率は2011年度から2014年度(年度末は3月)まで1桁に鈍化した。
それから、伸びは2015年度に10.5%、1億600万4,000人を運んだ2016年度に17.5%へと盛り返した。2017年度の上期(2016年9月までの半年)には、旅客数は6,480万人と11.6%伸びて居る。
ライアンエアのAGB導入以降の旅客数の伸びで目覚ましい点は、搭乗率の向上である。それは、2014年度の83%から2016年度には93%と上昇し、引き続き2017年度上期に2ポイント上げて、95%となって居る。
ライアンエアの月別搭乗率:2013年度〜2017年度
*年度は3月まで
source: CAPA - Centre for Aviation, Ryanair.
2016年7月ライアンエアは、1暦月に1,100万人を超える旅客を輸送した最初のエアラインとなったが、2016年8月にはこの数字も上回った。オーストリア航空とフィンエアーの様なエアラインが、2015年通年で運んだ旅客以上の数を単月で輸送したことになる。
ライアンエアの低コストとは、運賃が下がっても(或は下がれば特に!)、利益を上げられる事を意味する
価格に関心を払わず、その代わり、望ましい搭乗率の達成に集中
旅客数の伸びはまた、安い燃油価格と、供給過剰が原因で、欧州エアライン市場全体での、弱い価格設定力を反映した、低運賃に刺激されて居る。ライアンエアとその殆ど全ての競合他社との違いは、価格に関心を払わず、その代わり、望ましい搭乗率の達成に集中して居ることだ。
ライアンエアはその超低コストのお陰で、競合他社よりずっと安い運賃でもまだ、プラスの利益を創り出せるのだ。
軟調な運賃にも関わらず、ライアンエアは、2017年度上期(2016年9月までの6ヶ月間)に、純利益の増加と、7%の経常利益を達成して居る。
同社は2017年度の純利益目標を、13億7,500万〜14億2,500万ユーロの範囲から13億〜13億5,000万ユーロの範囲へと、5%引き下げたが、それでも尚、業界をリードする利益率を達成しようとして居る。
<関連記事参照>ライアンエア、イージージェット、ノーウエジアン、ウイズエア、ペガサスエア:欧州のトップLCCを併せた総利益は下降 18-Nov-2016
欧州エアラインの有効座席キロ当たりコスト(CASK):2015年ライアンエアは最低
Source: CAPA - 航空センターCASKデータベース
CAAのCASKデータベースは世界中の全主要上場エアラインを網羅して居る。
ライアンエア研究所が、ディジタル戦略を付帯サービス収入を伸ばす基盤として先導
主要空港での存在感が増大して居るのに伴い、(今や、フランクフルトを含む。参照→ライアンのフランクフルトでの行動がルフトハンザに圧力をかけ、ドイツでの拡大の野望を支える10-Nov-2016)ライアンエアは具体的な商品も改善して居る。新しい737−800機材は、ボーイングの、より薄くてより快適な座席と脚回りのスペースを特徴とする、新たな「スカイインテリア」を装着して居る。
ライアンエアの次の局面展開は付帯サービス収入を伸ばすこと
安い運賃、路線網、そして商品の改良、またウエブサイトの改善などの顧客サービス向上が、ライアンエアの旅客数と搭乗率上昇を牽引して居る。ライアンエアの次の局面展開は付帯サービス収入を伸ばすことだ。
数年の間、ライアンエアはその全収入の20%を付帯サービスから上げると言う長期目標を持って居た。同社は、正式に新たな目標を掲げないままに、既に何年もこれを上回って居る(2016年度の付帯サービスは全収入の24%だった)。
ライアンエアは、まず付帯サービス収入の拡大戦略を構築する為に不可欠な、ディジタル戦略を開発し、改良することに専念して来たのだ。この分野の計画は、同社の「ライアンエア研究所」と呼ばれる新部門が牽引して来た。
ライアンエアは世界をリードするエアライン・ウエブサイトを持って居る
ディジタル分野の改善の出発点は、新たなデザインのサイトと、簡略化され、より利用者に優しい予約手続きである。
今や全旅客の93%が、同社のウエブサイトから直接、予約をして居る
ライアンエアによれば、今や全旅客の93%が、同社のウエブサイトから直接、予約をして居る。そのウエブサイトへの訪問者の数は、2015年9月の3,900万人から2016年9月には4,640万人へと16%伸びて居る。
ライアンエアの2017年度上期の業績公表データ、及びSimilarWeb社(英国のIT企業)によれば、Ryanair.comは、最近、訪問者数でサウスウエスト航空を抜いて、世界最大のエアライン・ウエブサイトになった。
2016年9月には、サウスウエストの約4,000万に比べ、4,600万の訪問者があった。サウスウエストはライアンエアより多くの旅客を運んで居ることから(2015年暦年では、1億1,820万人対1億140万人)、これは、このアイルランドのLCCが、刷新したウエブサイトから何か確かなものを得たことを示して居る。
エアライン・ウエブサイトの訪問数(百万):2016年9月
Source: SimilarWeb (from Ryanair 1H2017 results presentation 7-Nov-2016.
ライアンエアは2014年にモバイルアプリの展開を開始したが、SimilarWeb社のライアンエア2017年度上期業績発表によれば、今や、2016年9月の利用数で、英国で8番目に大きな旅行アプリに成長して居る。英国の主要な競合エアラインであるイージージェット(第20位にランク)や、英国航空(第37位)を上回って居る。
また、ライアンエアのアプリの利用数は、エアbnb(15位)、スカイスキャナー(18位)、そしてhotels.com(34位)など、多くの他の旅行関連ビジネスより上位にランクされて居る。このことはライアンエアがこのアプリを使って、より幅広い商品とサービスを販売する、潜在能力を持つことを示して居る。
英国の旅行アプリ利用数:2016年9月
Source: SimilarWeb (from Ryanair 1H2017 results presentation 7-Nov-2016.
アプリの利用が予約へとつながる数も伸びて居る。ライアンエアのアプリを通じた予約が2015年9月の40万から2016年9月の110万へと174%も伸びて居る。同時期に、総旅客数に対するアプリからの予約の比率が5%から11%へと増えて居る。
また、ライアンエアのディジタル開発には、2014年に導入した顧客管理制度である「マイライアンエア」がある。
この制度は2015年9月の会員数550万人から2016年9月の1,500万人へと173%の増加になって居る。ライアンエアは、2017年末までに更に大きく伸びて、2,500万人以上になると予測して居る。
「マイライアンエア」には、顧客の嗜好や、予約履歴などの詳細情報が入って居り、同社が将来提供しようとする付帯商品やサービスの土台となり、より的を絞ったアプローチが可能となる。
ライアンエア:ディジタル分野の進展、2015年9月〜2016年9月
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Sep-15 |
Sep-16 |
Difference |
Growth % |
Web Visits |
39.9m |
46.4m |
+6.5m |
16% |
App Installs |
5m |
15m |
+10m |
200% |
App Bookings |
0.4m |
1.1m |
+0.7m |
174% |
My Ryanair Members |
5.5m |
15m |
+9.5m |
173% |
Source: CAPA - Centre for Aviation, Ryanair 1H2017 results presentation 7-Nov-2016.
フライト関連の付帯サービス売上が大きく成長
ライアンエア研究所の努力が、アプリとマイライアンエア会員を通して、同社のウエブサイトの利用拡大を牽引した。然し、これは、付帯サービスの売上増に繋がらなければ、あまり意味が無い。ここでも、ライアンエアは、成功の証拠を示すことが出来る。
2015年9月から2016年9月の間、ライアンエアが販売した座席予約は、46%伸びて290万席になり、販売した優先搭乗は128%伸びて508,000に、ビジネスプラスとレジャープラスのパッケージ航空券の販売は551%伸びて、270,000となって居る。
2014年に導入されたライアンエアのビジネスプラスは、保安検査優先ライン、優先搭乗、座席指定、2日間の航空券変更可能、専用チェックインデスク、空港チェックイン無料と言う特典がある。レジャープラスは、2016年6月に導入されたが、優先搭乗と座席指定、20kgの受託手荷物が提供される。
2017年度上期にライアンエアの付帯サービス収入は、全収入の伸びが僅か2%だったのに対し11%伸びた。2017年度上期の付帯サービス収入は前年同期の20%から伸びて、全収入の22%となった。
ライアンエア:付帯サービスの売上、2015年9月〜2016年9月
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Sep-15 |
Sep-16 |
Difference |
Growth % |
Reserved seats |
2.0m |
2.9m |
+0.9m |
46% |
Business Plus/Leisure Plus |
49k |
319k |
+270k |
551% |
Priority Boarding |
223k |
508k |
+285k |
128% |
Source: CAPA - Centre for Aviation, Ryanair 1H2017 results presentation 7-Nov-2016.
新たな付帯サービス目標:2020年度までに全収入の30%とする
今や、同社の改善されたウエブサイト、アプリの開発、そして、ライアンエア研究所の1年以上のディジタル開発計画の経験に基づいて、ライアンエアは、付帯サービス収入への更なる野心を宣言する位置に着いた。
同社は今、2020年3月までに、以前の目標である20%(そして、2016年度の水準である24%)から引き上げて、全収入の30%を付帯サービスから創出することを目指して居る。実際問題、ライアンエアは2009年度以来、それほど本気とは思えない様子で、目標の20%をずっと達成して居る。
ライアンエアの新たな目標である30%は、ウイズエアが2016年度に37%を達成して居る様に、欧州のエアラインでは、付帯サービス収入の最高水準という訳では無いが、付帯サービス収入に於いて、世界のトップエアラインの一つと言う位置づけをまさに強固にするだろう。
更に、中央及び東部欧州での重要な競争相手であるウイズエアの達成した最高水準は、ライアンエアの更なる上昇の可能性を示して居る。
<関連記事参照>ウイズエア:供給席の⅓でライアンエアと都市組合せが重なる=両社に商機、だがCASKは問題 7-Jun-2016
ライアンエアは、この付帯サービス収入の拡大を、多くの方法で達成したいと願って居る。同社は予約を、そして会員の特典の獲得をより迅速に出来るよう、モバイルアプリとマイ・ライアンエアの両方で改善を計画して居る。
暦年2016年の第4四半期には、全ての予約に関して自動的にマイ・ライアンエアへの会員加入となる予定で、また自動チェックインの様な、新機軸も計画されて居る。
…そしてライアンエア・ルームズ(そしてホリデイズ)の様な新たな展開が…
同社は2016年10月、ライアンエア・ルームズを開業
何年もの間、ライアンエアは、自社ウエブサイトで第3者のホテル客室を売って来たが、今や、その宿泊サービスの提供の幅を広げた。以前のサプライヤーであるbooking.comとの関係を終了したのに次いで、2016年10月、同社はライアンエア・ルームズを立ち上げた。
新たなサービスはホテル、ホステル、ベッド&ブレークファスト施設、ホームステイ/別荘、そしてその他の宿泊施設の提供を含んで居る。同社の説明では、ライアンエア・ルームズを通じた全ての宿泊施設は可能な限りの最安値となって居る。
2016年6月、ライアンエアは宿泊施設の供給者たちにライアンエア・ルームズのサプライヤーになるための提案を出すよう依頼した。2016年10月の開業時に於いて、サプライヤーは2社(Hotels.comとHotelopiaがライアンエアのウエブサイトに掲載されて居る)居たが、年末までには5社になると予測して居る。
ライアンエア・ルームズと、第3者のカーハイヤーサービスの更に先に、同社はまた旅客に目的地でのイベントやアクティビティの予約の機会を提供するサービスを計画して居る。これらは、周遊旅行、レストランや劇場の切符などを含む予定だ。
このホリデーパッケージは「ライアンエア・ホリデーズ」と言う名称で2017年の夏までに開始が計画されて居る。
AGB計画を通じて、ライアンエアは、緻密にその位置づけを改変した。同社の核となる低運賃の価値を維持する一方、より幅広い柔軟性と商品とサービスの改良を加えたのだ。この改定されたサービス提供への市場の反応は旅客実績の数値に現れて居る。
2016年11月7日、ライアンエアは2017年度の搭乗率目標を94%から95%に、旅客数を1億1,700万人から1億1,900万人に引き上げた。また、これにより、同社の2024年度旅客目標を1億8,000万人から2億人へと引き上げて居る。
CEOマイケル・オリアリーは航空座席が無料になる可能性について考えて居る
旅客数目標を引き上げたことは、矢張り低運賃の成果であるが、これは長いことライアンエアの考えて来たことで、特に付帯サービス収入を伸ばす、延長線上にある。過去に、CEOマイケル・オリアリーは、付帯サービスがエアラインに資金を与え、航空座席が無料になる可能性について考えて居る。
これは、実際の目標では無いが、この考え方は、今もライアンエアのディジタル戦略に浸透して居る。これによる競争に於ける優位性は、即座に明らかである。運賃無料と言うのは、有無を言わせぬ強みだ。
宿泊施設や、「ホリデイズ」の様な、付帯サービスの売上げを刺激するために、ライアンエアの経営陣は、既に安い航空運賃の、更なる割引の提供に言及して居る。
低運賃は、旅客であり、ウエブサイトの訪問者でもある人々を、惹きつける「見出し」である。もしエアラインが、その人々を、利益率の高い傾向にある付帯サービスを通じて、付加収入に変えられたら、更なる収益性が考えられる。
これは、核となる顧客の体験が満足の行くものであり、商品と価格の点で付帯サービスの範囲が顧客に望むものを与える事が出来て、初めて維持できるのだ。
エアラインも他のビジネスと同様で、しばしば、希望と大差のない目標や、誇大広告を掲げて居る。然し、以下の様な、ライアンエアの2017年上期の業績報告の結論に矛盾を見出すのは難しい:
「ライアンエアは、我々の顧客、我々の社員、そして我々の株主たちに最も恩恵を齎す方法で、コストを抑え、航空運賃を下げ、搭乗率を極大化する事により、欧州全体で収益性のある拡大を達成する事が出来ると信じて居る。」
以上
Ryanair: digital success raises ancillary target to 30% as it becomes the "Amazon of air travel"