当分析は、CAPAが12月9日に発表した
Peach Aviation, Japan's first LCC, continues expansion as Japan surpasses tourism targets
をJAMRが翻訳したものです。
日本初のLCC、ピーチ アビエーション、拡大を続ける=日本の旅行者数が目標を超える中で
ゆっくりだが着実な者が競争に勝つ。これが2012年以来、日本に入って来た、LCCの波の先駆けであるピーチ アビエーションからのメッセージだろう。日本はLCCの育つ市場では無いと言われてきたが、ピーチは、時とともに、成功を納めることが出来る事を示した。同社は、2年間、黒字を計上し、目下、20機のA320と言う保有機数に向けて事業を構築して居る。ピーチは、物静かな達成者であり、ジェットスター・ジャパンの様な攻撃的な拡大や、バニラエアの様な、もっとゆっくりした強化を見せてもいない。
昨年来、ピーチは2015年12月と2104年12月を比べると、国内線の便を2%伸ばしたが、国際線は43%増やし、国際線の拡大に集中して来た。国際線便はピーチの全路線網の中で35%を占めて居る。ピーチの国際線の拡大は、偶然、2015年に計画よりも5年間も前倒しで2,000万人を超えると思われる、訪日観光需要の流入と重なって居る。日本は2014年から2015年にかけて、660万人を増やした事になると見られる。これを2005年から2014年と比べると、日本はたった670万人の増加しか記録していない。10年間の増加数が、今や、たった1年間で達成される事になるのだ。
ピーチは、2012年3月、大阪/関西の基地から営業を開始した。そしてピーチは今や、関西で、ANAやJALを抜いて、最大のエアラインとなった。(大阪の都心に近い伊丹空港では、両社の方が大きい。)
ピーチは、2013年9月第2の基地を沖縄に、ついで2015年3月には成田に追加した。
また、ピーチは2015年に国際線便を東京/羽田から開始した。
Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG
ピーチは、福岡を基地とは考えていないものの、成田と同じ席数を福岡にも供給して居る。
福岡への供給は他のピーチの基地からやって来る。
ピーチのハブ/基地/空港所/都市別総供給席数上位10傑(図2)
Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG
ピーチは2017年度(2017年4月1日〜)には、仙台に基地を作ることを計画して居る。ピーチはすでに東京の北東にある仙台で第5番目の規模のエアラインになって居る。
仙台空港のエアライン別総供給席数:2015年12月7日〜13日(図3)
Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG
昨年、ピーチは拡大を国際線市場に集中して居る。ピーチは膨大な国内線の飛行計画を持って就航したけれども、長期的には、より国際線のエアラインになる事を予定して居る。2015年12月と2014年12月時点を比べると、国内線の便数は、たった2%の伸びなのに対して、国際線は43%増加になる見込みだ。OAGのデータによれば、国際線の区間/席数の構成比率は、2014年12月に28%だったものが、2013年12月に30%、そして今年35%となる見込みだ。
ピーチ アビエーションの国内線と国際線の往復便数(12月):2012年〜2015年(図4)
Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG
大阪/関西空港がピーチの主たる国際線ハブで、国際線のほぼ3/4を占めて居る。羽田は新たな国際線のハブである一方、沖縄は拡大して居る。ピーチは2015年9月、沖縄/那覇から、ソウルへ就航させ、現行の香港と台北に加え、3番目の国際線を開設した。ピーチは、予てから、沖縄は、大阪/関西より南にあり、東南アジアの飛行距離圏に入るので、沖縄を東南アジアに向けた、国際線ハブにすると言って来た。
沖縄=ソウルの就航にあたって、ピーチの井上慎一CEOは、その声明の中で、那覇から、我々は最終的には、ホーチミンシティ、ハノイ、バンコク、クアラルンプール、そしてシンガポールへの便を飛ばしたい。
国内線の拡大は、ピーチがハブを開設するのに合わせて、東京・成田に集中して居る。大阪/関西線の供給は2015年12月に前年同月比で幾らかの減少を見たが、2013年12月からは、まだ増加している。
ピーチ アビエーションの国内線片道便数、現有及び将来の基地発(各年12月):2012年〜2015年(図5)
Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG
井上氏は、最近シンガポールにて開催されたCAPAアジア航空サミットで、ピーチのハブの進化と、LCCにとって、次に来るのは何かについて語って居る。
ピーチ アビエーション井上CEO、ピーチの次の成長段階を語る:2015年11月
Source: CAPA TV
2015年11月シンガポールにて開催されたCAPAアジア航空サミットで、ピーチ アビエーションは、CAPAアジア太平洋、今年の低コストエアラインに選ばれた。授賞発表で述べられて居る様に、審査員の間で、ピーチは、台頭する日本のLCC業界の中で、急速にリーダーの地位を確立したとして選ばれた。「ピーチは、2012年、日本で最初の純粋なLCCとして事業を開始して居る。障害の多い、ますます混み合って来る市場の現場で、同社は商品と戦略の革新を通じて、他との差別化を果たして居る。」とCAPA会長のピーター・ハービソンは言って居る。「同社は2年連続で黒字を出し、最も重要な事は、LCCのビジネスモデルが、日本市場でも成功し得る事を証明したのだ。」
ピーチの黒字はLCCが機能しないと言われて来た市場で、そして、状況は改善しつつあるとは言え、競争相手各社が赤字を出して居る時に大きく際立って居る。ピーチの財務諸表は、強力な運航指標に迎えられる事になった。即ち、日本で最高の運航完遂率(欠航率の反対)99.1%、最高の搭乗率(85.9%)、純輸送旅客数1,100万人を最速で達成したエアライン(2015年10月に達成)などである。
ピーチ アビエーションの財務諸表:2013年度〜2014年度(図6)
Source: Peach
<関連記事参照>
ピーチ・エビエーションの黒字=日本の変わりゆく市場でジェットスターとスカイマークの損失の影に隠れる 18-Nov-2014
「ピーチは、しばしば謙虚な姿勢を見せ、堅実な成長を追求して来た、然し、これが財務的にも、戦略的にも、市場からの評価でも実を結んだのだ。」と授賞理由は言って居る。
<関連記事参照>
SIAのゴーチュンフォンとライオン・グループのルスディ・キラナ=2015年CAPAアジア太平洋賞ディナーで表彰 24-Nov-2015
ピーチの井上慎一CEO、ピーチの成長を語る:2015年11月
こちらからご覧ください→http://centreforaviation.com/analysis/peach-aviation-japans-first-lcc-continues-expansion-as-japan-surpasses-tourism-targets-256451
Source: CAPA TV
ピーチは東京/成田に拡大しただけでは無く、羽田から国際線を飛ばす日本で最初のLCCになった。2016年3月までに、ピーチはエアアジアX、香港エクスプレスについで羽田で第3の規模のLCCになる予定だ。ピーチはソウル/仁川、台北/桃園(どちらも毎日1便以下だが)に深夜時間帯発着枠を使って定期便を飛ばす計画である。昼間帯の国内線、国際線の便はまだである。
大阪のエアラインにとって、ジェットスター・ジャパン、バニラエアそして春秋日本という東京のLCCに先駆けて、最初の日本のLCCとして羽田から飛ぶだけでなく、国際線を始めるのは、大胆な行動である。
東京/羽田におけるエアライン別、国際線LCCの供給席数:2016年2月26日〜2016年3月6日(図7)
Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG
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ピーチ アビエーション、東京を基地として日本の路線網を固める=春秋ジャパンは増資を図る 29-Jan-2015
ピーチ アビエーション路線図:2016年2月(図8)
Source: Peach
ピーチは、2017年にA320を20機保有する計画。ジェットスター・ジャパンは既に20機。バニラは2018年までに16機以上
2015年12月現在、ピーチは全てA320の保有機17機を運航して居る。2015年6月にエアバスに3機のA320を発注したが、これが最初の直接購入である。ピーチは2017年4月に始まる017年度の初頭にA320を20機保有する計画だ。ジェットスター・ジャパンは、既にA320を20機運航して居り、(然し、最近まで稼働率が低かった)更なる発注予定は無い。バニラエアは、現在A320を8機保有し、2018年までに16機以上に増やす(そして多分、広胴機も導入する)計画である。
<関連記事参照>
バニラエアの 親会社ANAとの二重ブランド計画=広胴機と新たな基地が再検討される中で
31-Oct-2015
2015年2月、ピーチの出資者である、ファーストイースタン投資グループのビクター・チュウ会長は、ピーチは25〜30機の航空機を追加購入し、そのうちの何機かは現有機の更新に使われると言う、保守的な見通しの中期計画(向こう7〜8年間)を策定して居ると述べて居る。ピーチの現有機材は全てリース機で、2015年12月現在、平均機齢は2.4年である。チュウ氏は、ピーチは現在の出資者から、またはIPOを実施しての増資をする事になるだろうと言って居る。
ピーチは、21番目の機材の受領のあとに、別の機種を導入する事を検討すると言って居るが、これは多分、近距離路線市場を超えて拡大する事を示唆しているのだろう。
日本は入国旅客を2013年の1,000万人から、2020年に2,000万人に、ついで2030年に3,000万人に拡大すると目標を掲げて居た。当時、日本の円高やビザ発給の障害が大きな拡大を不可能にして居て、たった7年間で訪日旅客を倍増させるのは、とても野心的に見えたのだが。
これが、円の値下がりと日本のビザ基準の緩和で特に東南アジアから、達成されようとして居る。
10年間の入国旅客の拡大をたった1年で達成
結果として、日本は2015年に、計画より5年早いスケジュールで2,000万人を超えるのでは無いかと見られて居る。(2015年の最初の10ヶ月で、既に2014年の実績を超えて居る)2015年に2,000万人に達するには、2014年全体に比べ660万人を加える事になる。この1年間で660万人の増加は、日本が2005年から2014年の間に増やした670万人とほぼ同じだ;即ち、10年間の入国旅客数の増加をたったの1年間で達成する事になる。
日本の入国観光客:1990年〜2015年推定実績(図9)
Source: CAPA - Centre for Aviation and JNTO
当初の予測を超える結果として(CAPAは当時、余りに保守的だと指摘した)、日本は安倍晋三首相に目標の期中見直しを提言する諮問機関を立ち上げた。2020年の目標は、7年間で訪日客が4倍となる事を意味する、4,000万人に引き上げられる可能性がある。4,000万人の目標達成には、2016年から2020年まで、毎年400万人の追加を必要とするが、2005年から2014年までの間に、700万人近くの増加を達成したのを見ると、これも保守的な数値だったという事になるかも知れない。
旅行客の数値は、概ね、日本の管理出来る範囲にある。即ち、ビザをどの位、更に緩和するか(東京/羽田以外の航空協定の合意は概ね良好である)、そして観光インフラを日本がどの位、発展させられるかにかかって居るのである。懸念としては、東京が、飽和状態になりつつあるのに対し、その他の日本各地は恩恵を受けていない事だ。より高い目標達成に脅威となる主な外的要因は、燃油価格の値上がりである。また、日本は発地市場として中国に依存する必要が有るだろうが、出国旅行客が、中国経済の如何なる変化にどの様に影響されるかの指標がない事である。
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日本、来訪客増、エアラインの成長を図るため、対中国ビザを緩和=東南アジアでの成功に続けて13-Jan-2015
井上氏は、7人の外部の助言者の1人としてパネルに座った。彼は唯一のエアラインからの代表者で(ANAとJALは出席していない)、その他は、ホテルと鉄道の業界からである。
観光振興が、しばしば安倍首相の右腕と呼ばれる、官房長官菅義偉の主要なプロジェクトの1つになって居るため、日本では入国旅客の伸びが脚光を浴びて居る。
ピーチは、日本のLCCの中で、国際線供給席数では断然最大で、その規模はバニラエアの2倍である。
然し、更に大きな成長の物語を持つのは外国のLCCである。上海を本拠地とする春秋航空は、ピーチに肉薄して居り、間もなく追い抜く模様である。春秋は大阪/関西だけに向けて、週間100便を飛ばすと言う中期計画を掲げて居る。
2015年12月時点で、春秋は日本から週間92便、一方ピーチは94便である。春秋は既に、入国旅行客についてはより大きな貢献をして居る。すなわち、殆ど全旅客が日本を訪れる中国人である一方、ピーチの国際線では、外国人旅行客は60%の占有率である。(バニラエアでは70%に近い)
春秋とその他のエアラインは、中国=日本間の旅客を獲得する好位置に居る、一方で日本のLCCは依然としてこの巨大で難しい市場に対して慎重である。中国人訪日客は、今や全旅行客の消費額の28%近くを占めて居る。
<関連記事参照>
日本のLCC、爆発する中国市場に攻勢の可能性=エアアジア・ジャパンの就航、春秋日本の拡大で 15-Nov-2015
LCC各社の日本の国際線供給席数:2015年12月7日〜13日(図10)
Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG
*印は外国社
然し、LCC各社は、フルサービス各社の国際線供給席数に比べると小さなものである。それでも、彼らフルサービス各社は(日本と中国のエアラインを除き)日本での拡大について、LCC各社より悲観的な傾向にある。
全エアラインの、日本に於ける国際線供給席数:2015年12月7日~13日(図11)
Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG
*印は外国社
ピーチはこれまで堅実な成長を遂げたが、バニラエアとの複雑な統合を処理する必要があるかも知れない
日本の3大LCCである、ピーチ、ジェットスター・ジャパンそしてバニラは、収束点に向かって居る。ジェットスター・ジャパンは、余りにも急速に拡大し、機材の追加を止めた(しかし稼働率を上げた)。一方、バニラエアは規模を倍増、ピーチは堅実な道を継続。公表された機材計画によれば、数年間で、彼らは保有機材数の規模でも似通ったものになるだろう。
ピーチもバニラも、将来の機材計画を考えて居て、広胴機の様な、他の機種が必要かどうかを検討して居る。然し、先ず、両社が統合する方が、意味があるのかも知れない。
両者間でのシナジー効果や、商機が失われる事があるだろうし、一方で、エアアジア・ジャパンと闘いながら、ジェットスター・ジャパンにより強い圧力を掛けねばならない。春秋は現在の所、市場が重なってはいない。
<関連記事参照>
バニラエアの 親会社ANAとの二重ブランド計画=広胴機と新たな基地が再検討される中で 31-Oct-2015
ピーチは、アジアとの懸け橋になりたい、多分将来は外国に基地を持って、日本のブランドでなく、汎アジアのブランドと見られたい、と語って居る。若しピーチが複数の複雑なアジアの文化の懸け橋になると言うなら、先ず、バニラエアを取り込む、或いは、継承する事が出来る事を示す必要があるのではないだろうか。
以上
Peach Aviation, Japan's first LCC, continues expansion as Japan surpasses tourism targets