2017年8月1日
(写真・文、 光岡主席研究員)
長刀鉾(なぎなたほこ)①
山鉾巡行の順番は「くじ」で決められますが、「長刀鉾」は「くじとらず」と呼ばれ、常に先頭にたちます、
唯一、町衆の子弟から選ばれた「生稚児さん」が乗っています。
今年も、7月中旬、京都祇園祭(前祭)を観てきました。梅雨の最中ですが、山鉾巡行の午前中は雨も降らず、豪華絢爛な行列を堪能しました。夕方からは土砂降りの雷雨、ラッキーでした。
山鉾を飾る重要文化財級のゴージャスなタペストリーは、シルクロードを通って伝えられた欧州・西域・インド・中国・朝鮮の物、実物です。目を見張る美しさです。正に“動く美術館”です。
今回は、前祭の山鉾23基の内、「鉾」の8基をご紹介します。
因みに、7月下旬の後祭の山鉾は10基です。
長刀鉾と生稚児さん
「祇園祭」は八坂神社(祇園さん)の祭礼で、貞観11年(869年)、全国に流行した疫病の退散を願い
「牛頭竜王(素戔嗚尊)」を祀った国家行事「祇園御霊会」を起源としています。
現在の様な豪華絢爛なお祭りになったのは、室町時代以降、力を持った京都町衆(豪商)の心意気によるもので、都をあげての町衆・庶民の祭りとなってからです。
応仁の乱、戦国時代、幕末の混乱の中、炎上した山鉾もありますが、その都度、再興、千年以上の時間を伝えてきました。
後祭に登場する「大船鉾」は、幕末蛤御門の変で炎上しましたが、平成26年、150年ぶりに再興されました。
長刀鉾 ②
前懸はペルシャ花文様絨毯、胴懸には中国玉取獅子図絨毯、中東連花葉文様インド絨毯な
ど,16世紀~18世紀の稀少な絨毯が用いられていましたが、現在はその復元品を使用。
長刀鉾 音頭取り
函谷鉾(かんこほこ) ①
音頭取り
函谷鉾(かんこほこ) ②
鉾の名前は、中国戦国時代の斉の孟嘗君の故事からつけられました。
前懸は、旧約聖書創世紀の場面を描いた16世紀末の毛綴で重要文化財,平成18年復元新調されました。
胴懸は梅に虎を織り出した17世紀李氏朝鮮絨毯、花文様インド絨毯、玉取獅子図中国絨毯の三枚です、平成8年復元新調されました。
屋根方
旧約聖書創世記を描いた前掛けは重要文化財
函谷鉾(かんこほこ)
お稚児さんは人形です
月鉾 ①
「月讀尊(つきよみのみこと)を祀っています、
屋根裏の草花図は丸山応挙の筆、
天井には源氏54帖扇面散図があり、
前懸のメダリオン絨毯は17世紀のインド製です、
左甚五郎作と言われる彫刻などもあり、
全てが豪華です。
稚児(人形)とお囃子方
月鉾 ②
前懸けの“メダリオン絨毯”は、17世紀のインド製です
音頭取り
月鉾 全景
屋根方
鷄鉾(にわとりほこ) ①
「史記」に記された古代中国の聖人、“堯”の太平だった治世の故事を題材とした鉾です。
お囃子方
菊水鉾 ②
真木の天王座に放下僧の像を祀る鉾です。
稚児舞の出来る稚児人形は「三光丸」と言います。
新下水引は「華厳宗祖師絵伝」を下絵とした綴織です。
放下鉾 全景
操り稚児人形
屋根方
音頭取り
岩戸山 ①
“天岩戸”の日本神話を題材としている“曳山”です。
元来、“山”ですが“鉾”の形態をしています、江戸時代の洛中洛外図屏風にはすでに車輪が描かれています。
屋根の上は、“山”なので、“鉾柱”の代わりに“真松”を立てています。
屋根方と“伊弉諾尊”
屋根の上には、“天瓊矛”(アメノヌボコ)をつき出した“伊弉諾尊”(イザナギノミコト)を安置しています。
日本神話の神功皇后の出陣を題材にした鉾です。
舳先に想像上の瑞鳥“鷁”(げき)が飾られています。
音頭取り
船鉾 ②
船鉾の舵は黒漆塗青貝螺鈿細工です。
引き方
鷄鉾全景
鷄鉾(にわとりほこ) ②
トロイの王子と妻子の別れを描いた16世紀のベルギー製の“見送り幕”は、重要文化財です。
音頭取り
菊水鉾 ①
町内にあった“菊水井”にちなんだ鉾です。
稚児は、謡曲を題材とし、魏の文帝の勅使が霊水を求めて山に入った時会った、菊の露を飲んで700年生きた少年を体現しています。 唐破風造りの屋根が特徴です。
放下鉾 ①
操り稚児人形
“前懸・胴懸”は花文様のインドやペルシャの絨毯です。
“見送”(後ろの幕)は文政11年(1828)京都西陣で作られたものです。
放下鉾 ②
ふくろうの“見送り”は、「バグダッドで」と題する皆川泰蔵の麻にロウ染めの作(1982年)
放下鉾 ③
放下鉾、後ろ姿
前懸は玉取獅子図中国絨毯、胴懸は唐草文様インド絨毯です。
岩戸山 ②
音頭取り
船鉾 ①
船鉾全景
船鉾後ろ姿