2019年10月15日
(写真・文、 光岡主席研究員)
美濃国一宮「南宮大社」は、神武東征の際、「金鵄(金のトンビ)」を飛ばし、熊野から大和へ進軍する天皇の軍勢を道案内する「八咫烏(ヤタガラス)」を助け戦勝をもたらした功をもって、当郡府中に祀られたのを創建と伝える古社です。その後、崇神天皇の時代に現在地に奉遷、国府の南に位置したことから「南宮大社」と呼ばれるようになりました。
“関ヶ原の戦い”では、近くの“南宮山”に毛利氏が布陣、安国寺恵瓊が南宮大社の社殿を焼き払いました。現在の社殿は、徳川家光によって再建されたものです。
主祭神の「金山彦命(カナヤマヒコのミコト)」は、「伊邪那美命(イザナミノミコト)」が火の神「迦具土神(カグツチノカミ)」を産んだ時、火傷を負い苦しんで吐いた嘔吐物から生まれた神で、「金属・鉱山の神様」です。
「金山彦命」を祀る全国3千社の総本社で、全国の金属加工、刃物等を扱う業者から篤い信仰を集めています。刀工で有名な“関の孫六”も南宮大社に近い美濃赤坂が発祥地です。近くに、銅・鉄を産した“金生山”があったことが関係しているのかもしれません。
古来から、金属(鉄器・武器)を祀る当社は、軍事力の象徴となり、源氏、北条氏、土岐氏、徳川氏など有力な武将の崇敬を受けてきました。
脇神としては、「彦火火出見尊(ヒコホホデミノミコト)」と「見野命(ミノノミコト)」が祀られています。
「彦火火出見尊」は、「山幸彦海幸彦」神話の「山幸彦」のことで、神武天皇の祖父にあたり、農業・稲穂の神です。何故ここに祀られているのかは不明です。
「野見命」は、神話には出てこない不明の神ですが、「見野」は「美濃」に通じ、元来の地元の神が祀られていると思われます。