2018年3月1日
(写真・文、 光岡主席研究員)
京都には“病気平癒”にご利益があると伝わる寺社がたくさんあります。 今日は、その内、伝説の残っている2つの寺社を紹介します。
1. 護王神社
「宇佐八幡宮神託事件」に功のあった奈良時代の貴族「和気清麻呂」を祀っています。京都の目抜き通り「烏丸通り」に面し、向かいは京都御所です、京都の一等地です。 この事件とは、日本書記によれば概略は以下です。
769年、称徳女帝の寵愛を受けた「道鏡を皇位につければ国は平安になる」との宇佐八幡宮の不可解な託宣が都に伝えられた際、その真偽を確かめるため“和気清麻呂”が宇佐八幡宮に派遣され、「日本は臣下が君主となった例はない。皇位には皇族をたてるべし。」との神託を持ち帰り朝廷に上奏しました。これにより“和気清麻呂”は道鏡の怒りに触れ大隅国へ流罪となりましたが、“道鏡”が帝位につくことは阻止されました。称徳女帝の崩御後、道鏡は失脚、和気清麻呂は流罪を許され、平城京に復帰、その後、「平安京遷都」にも尽力しました。
護王神社 鳥居
護王神社 拝殿
和気清麻呂像
護王神社本殿
和気清麻呂が流罪地/大隅国へ向かう途中、道鏡の討手に襲われ足を怪我しましたが、どこからともなく現れた“300頭の猪”が和気清麻呂を途中の宇佐八幡宮に守り届け、その地で足の怪我を治癒させた・・・という伝説があります。
この故事から、護王神社は「いのしし神社」とも言われ、“狛犬”の代わりに“霊猪”が神社を守っています。
また、「足腰の治癒」にご利益があると篤く信仰されています。
祈祷殿(足腰守神)
狛犬役の霊猪像
2. 仲源寺「目疾(めやみ)地蔵」
「仲源寺(めやみ地蔵)」は、賑やかな祇園の中、目抜き通りの四条通に面し鴨川からも近い地にあります。
黒光りした木造のお地蔵様の右目は少し潤んで充血しているように見え、そのため、眼病で苦しんでいる人の身代わりになっておられるとして、“目の病気にご利益があるお地蔵様”として信仰を集めるようになりました。
仲源寺(めやみ地蔵)
めやみ地蔵尊
・・・祇園商店街振興組合より
めやみ地蔵尊石碑
めやみ地蔵尊 本堂
「目疾地蔵尊」額
しかしながら、安置された当時は全く別の目的のお地蔵様でした。
鎌倉時代の1288年、続く大雨から鴨川が氾濫した際、防鴨河使であった勢多判官為兼がお地蔵菩薩のお告げに従い、雨が止むように祈祷を行った所、大きな洪水を防ぐことができたと伝わります。
お告げに感謝した為兼は、この地に「雨やみ地蔵」と名付けたお地蔵様を安置しました。
これが、後に転訛して「目やみ地蔵」となり、江戸期には“眼病に霊験のある名地蔵”と数えられるようになりました。